最近の文章(らふていさを/大池功)【1】


時には低く唄え【ぼくの好きなうた52】  
 月の綺麗なのは 十日と三日
 娘の綺麗なのは 十七つ

 どうです。対句。
 対句ってこういうものですよ。こんな風に控えた態度で唄い始めて、後半で本題を吐露する。
 十七歳(数え年ですよ!)の娘よ、この歌を聴いて十分に恥じらうがいい。
 十七歳を過ぎた「元娘」よ、取り戻せぬ歳月を恨みつつ過去を辿って微笑んでください。

 旧暦如月十三夜、今年も私らふては春の旅、いつもの浜で月を楽しんでおりました。(数え)十八、九の高校生【注】も夜光虫には大喜び、ペットボトルに掬ってみたりして童のように大はしゃぎ。大人たちは酒を酌みつつ島の過去現在未来を語り合う。

【注】都立Z高校の沖縄修学旅行放棄についてはこの頁の終わりをご覧下さい。

春風。平和の礎。勲は45/3/24海上で戦死。  


寺田勲(摩文仁にある平和の礎)静岡県出身
 この数年欠かさない「春の旅」は、私らふてが自分の分身であるところの厭戦家イサヲの戦死を認識し直す摩文仁(平和の礎)への旅【注】なのだが、今年は高校生三名を中心とする旅(去年の秋に某都立高校のしでかした沖縄修学旅行の途中放棄をきっかけにマイナスをプラスに転化すべく企画したもの)を兼ねて、行って参りました。
 まことに恵み深い琉球の風土と文化に支えられ、そしてそれらに育まれ、育んでいこうとする沖縄人たちに支えられて、いい旅となりました。感謝。海も風も、御嶽も拝所も獅子もガマも、蝦も井守も鳥も魚も蛍も夜光虫さえ、優しかった。どうして皆、こんなにもさりげなく多くの幸いを旅人に与えてくれるのだろう、らふては毎度同じ問に煩わされるのだった。

【注】都立Z高校の修学旅行についてはこの頁の最後をご参照下さい。クリック→【寺田 勲】については写真入りで頁が完成(02年06月)。どうぞたっぷり読んで下さい, 4頁分あります。
 

 さて、高校生たちを無事に那覇空港で見送ってからのこと。改めて海辺の空気を吸いに海岸の村に行くと、十年来の友人がちょっと声を潜めてこんなことを言う「最近また、楽器吹き始めてるんだよ。ベース弾きと知り合いになってさ…」、彼は自称「アドリブのできないペット吹き」である。四月第一日曜に浜辺で手作りの祭を企画している張本人だ(去年は四月一日(日)であった、注6)。もう一人の友人の家からはサックスの音が漏れているではないか。祭まで約一週間、本格的な練習が始まったということだ。彼ら二人は今回、例の海上ステージで近所の仲間と組んだバンドをやろうというのだ。音の支えはベテランベース弾きのK氏とのこと。
 

〜知り合いに誘われ、丘の上の畑へ〜  


 サックス吹き(兼バンマス)の誘いで三月三十一日(日)芋掘りに参加。彼の知人のU氏の畑は丘の上にあって実に景色もいいし、風もいい。山羊や馬、鶏、七面鳥まで飼っている。老若男女が集まってきてジャガイモを掘り始める頃にラジカセから絃の響き。どこかで聴いたような旋律、と思ったら、ウードの奏でる「豊年の唄」である。K氏は最近、自分のやりたいことがあると知り合いのスタジオで録音して、デモ(CDR)にして楽しんでいるのだと言う。
 畑の芋を掘り尽くしたら、ビールの時間です。日の光が温かい。眼下にS湾が見えている。遠くY半島やT島も霞んでいる。
 K氏は「そうそうこれを聴いたことありませんか」と既に発売されているCDを取り出した。らふて「タイトルだけしか…」。では、とかける。12曲目、月の美しゃ「苗子さんの唄がいいんだよ」力がこもる。
 ウードの前奏に連れられて、哲弘さんの声、低い!キーはD。一オクターブほど低く唄っている!(注7)そして、十分に感情のこもったウードのソロの後、女声。

 恋しい人の御家の東、御花が沢山咲いている
 
 皆さん!八重山の女声の低い声、聴いたことあります?(あの苗子さんであることを忘れて)らふてはまず、この声に参ってしまいました。皆さん、まだ聴いてない方は必聴です。 
 それにしても「花摘む振りして逢いに行こ!キャッ」などという恋の唄を子守唄にするとはなぁ。八重山の語彙を多少理解するらふては、子守唄聴く子どもには成れぬまま、またしても唄というものへの測り知れぬ疑問に煩わされ、同時に想像上の恋心をば辿りつつ、まぁ、今んところはこんなして原稿書いている
のですよ、多摩の住宅地で。
 では、またや。

【参考】CD「いやり(伝)」大工哲弘  ディスク アカバナー 01年
 


あの人のお家にはたくさんの花
詳しくは↓を。【注】も↓で。
【寺田 勲】について←ここをクリック
沖縄修学旅行「放棄」に抗議して
【加害者はどこに?〔基地被害も風評被害も根は一つ〕】
都立Z高校の沖縄修学旅行放棄(01年秋)に関係する掲示板



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